情報漏えいのニュースが続くいま、家庭で確かめておきたいこと
10月に入って、企業や団体からの情報漏えいの発表が相次いでいます。不正アクセスによる漏えいの報告は、10月前半だけで9月1か月分の2倍を超えました。何が起きているのか、家庭では何を確かめておけばよいのかを整理します。
10月に入って、報告の数が一気に増えています
「また情報漏えい」というニュースを、ここ数週間で何度も目にした方は多いのではないでしょうか。
個人情報保護委員会が10月28日に公表した資料によると、不正アクセスによる個人データの漏えい等の報告は、今年4月が166件、7月が212件、9月が303件と増えてきました。それが10月は、16日までの半月だけで830件にのぼっています(個人情報保護委員会「最近の不正アクセスによる個人データの漏えい等の傾向」)。
同じ資料では、4月1日から10月16日までに漏えい等した延べ本人数は約2億6,000万人とされています。ただしこれは、委託元と委託先が同じ事案を両方報告した分も含む「延べ」の数で、しかも速報時点の値です。日本の人口の2倍の人が被害にあった、という意味ではありません。それでも、10月の830件のうち4件は1件で1,000万人を超える規模で、大きな事案が続いていることは確かです。
なお、ここで紹介している件数や事案の状況は、2026年10月30日時点で公表されている情報にもとづくものです。今後の調査や発表によって変わる可能性があります。
入口になっているのは「外に開いたサービス」です
では、何が起きているのでしょうか。
IPA(情報処理推進機構)は10月9日の注意喚起で、公表されている事例の傾向から、インターネットに公開しているアプリやサービス、アカウントへの侵入が起点になっているとみられると説明しています(IPA「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について」)。JPCERT/CCも、一般に公開されているスマートフォンアプリを解析して、裏側でデータをやり取りする仕組み(API)を探り当てる手口や、AIを使った攻撃ツールを悪用した攻撃の試みを確認しています(JPCERT/CC「直近で相次いでいる国内組織における不正アクセスに関する注意喚起」)。
IPAが毎年まとめる「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編でも、1位はランサム攻撃、2位は委託先などを狙ったサプライチェーン攻撃、3位には「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて入りました(IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」)。
私たちがふだん使うサービスの多くは、会社の中だけで閉じておらず、外のシステムや委託先とつながっています。どこか一か所に弱いところがあると、そこから情報が持ち出されてしまう、という構図です。
子どもや学校に関わる場面でも起きています
漏えいは、大きな企業だけの話ではありません。
8月には、プロバイダ向けのメールシステムへの不正アクセスで、約1,223万人分のメールアドレスとパスワードが漏えいしたことが明らかになりました。そのうち約762万人分は、パスワードが暗号化されないまま保存されていたと、個人情報保護委員会が公表しています(個人情報保護委員会 報道発表 2026年8月19日)。
10月には、東京都世田谷区が行っているSTEAM教育講座で、申込者への通知に使っていたメール配信システムへの不正アクセスにより、申込者3,159件のメールアドレスが漏えいした可能性があると発表されました(世田谷区「STEAM教育講座のメール配信システムへの不正アクセスによる情報漏えいの可能性について」)。習い事の申込みや学習サービスの登録など、子どもに関わる場面でも、情報は外のサービスに預けられています。
漏えいそのものより、気をつけたい「その後」
漏えいしたと聞くと不安になりますが、家庭で特に気をつけたいのは、漏えいの「その後」です。
ひとつは、パスワードの使い回しです。どこかのサービスから漏れたメールアドレスとパスワードの組み合わせを、別のサービスで次々に試す手口が知られています。同じパスワードを使っていると、漏えいとは関係のないサービスにまで入られてしまいます。
もうひとつは、流出元をかたる偽メールです。警察庁は10月の注意喚起で、情報が漏れた企業を名乗るメールのリンクを安易に開かないよう呼びかけています(警察庁「サイバー警察局便り Vol.19」)。「お詫び」「確認のお願い」といった文面は、つい開きたくなるものです。
家庭で今日からできる4つのこと
公的機関がすすめている対策は、特別なものではありません。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」や警察庁の注意喚起をもとにまとめると、次の4つになります(総務省「安全なパスワードの設定・管理」)。
① パスワードは10文字以上の推測されにくいものにし、サービスごとに変える(漏えいがなければ、定期的に変える必要はない)
② ログインのときに確認コードなどを使う多要素認証を、使えるサービスでは設定しておく
③ 漏えいのお知らせが届いたら、そのサービスと、同じパスワードを使っている他のサービスのパスワードを変える
④ 企業を名乗るメールのリンクは開かず、公式サイトやアプリから確かめる。困ったときは警察相談専用電話「#9110」へ
全部を一度に完璧にする必要はありません。まずは、家族がよく使うメールやゲーム、学習サービスのパスワードが使い回しになっていないかを確かめるところから始めると、取りかかりやすいと思います。
子どものアカウントは、親子で一緒に
子ども自身も、ゲームや学習アプリ、学校の端末で、IDとパスワードを使っています。
文部科学省の情報モラル教育の資料では、次の学習指導要領に向けた案として、小学校低学年のうちから「IDやパスワードを他人に教えない」ことを学ぶ例が示されています(文部科学省「知りたい!情報モラル教育」)。
家庭では、パスワードを子どもひとりに任せきりにするのではなく、親子で一緒に決めて管理するのが現実的かもしれません。「知らないメールやメッセージが来たら、開く前に声をかける」という約束をひとつ決めておくだけでも、子どもが迷ったときの助けになります。
学校でも「情報セキュリティ」を学ぶ時代に
学校の学びも、この流れに沿って変わりつつあります。
いまの学習指導要領では、情報モラルを含む「情報活用能力」が、言語能力と並ぶ学習の基盤となる力に位置づけられています。高校の必履修科目「情報Ⅰ」の目標には、「情報セキュリティを確保しようとする態度などの情報モラルを養う」ことが書かれています(文部科学省「情報Ⅰ」教員研修用教材)。
10月5日に示された次の学習指導要領の審議まとめでは、小学校に「情報の領域」、中学校に「情報・技術科」を新しく設け、情報モラルやメディアリテラシーの育成を大きく見直す方向が示されました(文部科学省 教育課程部会 審議まとめ)。その検討の中では、情報モラルの指導は「学校による取組の差が大きい」という課題も挙げられています(文部科学省 情報・技術ワーキンググループ 取りまとめ(案))。いずれもまだ審議の段階で、決定ではありません。
慌てず、ひとつずつ確かめていく
情報漏えいのニュースが続くと、何から手をつければよいのか分からなくなりがちです。ただ、家庭でできることは、パスワードを使い回さない、多要素認証を使う、怪しいリンクを開かない、という基本に集約されます。
ニュースをきっかけに、家族のアカウントを一度見直してみる。それだけでも、漏えいが起きたときの被害は小さくできます。そして、子どもが「なぜパスワードを使い回してはいけないのか」を仕組みから理解できると、言われたから守るのではなく、自分で判断できるようになっていきます。
情報漏えいをめぐる状況は、いまも動いています。この記事の内容は2026年10月30日時点の公表情報にもとづいており、今後の調査や発表で変わる可能性があります。Swimmyのコラムでは、新しい情報が公表されたら、本件の続報を「vol.2」としてお届けする予定です。
Swimmyでは、「作る・試す・発表する」を繰り返しながら、コンピュータやネットの仕組みを自分の手で確かめる経験を積み重ねています。画面の向こうで何が起きているのかを、少しだけのぞいてみたい方は、無料体験レッスンをのぞいてみてください。